「最も卑屈で謙虚だと信じられている者たちは、たいてい最も野心的で妬み深い」

- 1632年11月24日~1677年2月21日(44歳没)
- オランダ出身(ポルトガル系ユダヤ人)
- 哲学者、合理主義思想家
英文
”Those who are believed to be most abject and humble are usually most ambitious and envious.”
日本語訳
「最も卑屈で謙虚だと信じられている者たちは、たいてい最も野心的で妬み深い」
解説
この言葉は、人間の表と裏の心理を鋭く突いたものである。人は一見すると謙虚で卑下しているように見えても、その内面には強い野心や嫉妬が潜んでいることがある。スピノザは人間の感情を理性によって分析しようとしたが、その観察の中で、表面的な謙虚さがしばしば偽装であり、むしろ欲望の強さを隠す手段であることを見抜いていた。
この洞察は、彼の感情論とも一致する。スピノザによれば、人間は自らの欲望を満たそうとする「コナトゥス(自己保存の欲求)」によって動かされる存在である。したがって、謙虚に見える態度も実際には他者からの承認を得るための戦略であり、その裏に支配欲や羨望が隠されている場合がある。つまり、外見上の卑屈さと内面的な野心は矛盾せず、むしろ結びついているのだ。
現代社会においても、この指摘は大きな意味を持つ。例えば、組織や政治において「私は無力です」と振る舞う人が、実際には機会を狙って権力を握ろうとすることがある。また、SNSなどでも自己卑下を装いながら承認を求め、内心では他者を妬んでいる例は少なくない。スピノザの言葉は、人間理解において外見的態度に惑わされず、その背後にある欲望を見極める理性の重要性を教えている。
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