「罪というものは自然状態では考えられず、市民状態においてのみ、何が善で何が悪かが共同の合意によって定められるときに存在する」

バールーフ・デ・スピノザの名言・格言・警句
バールーフ・デ・スピノザの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1632年11月24日~1677年2月21日(44歳没)
  • オランダ出身(ポルトガル系ユダヤ人)
  • 哲学者、合理主義思想家

英文

”Sin cannot be conceived in a natural state, but only in a civil state, where it is decreed by common consent what is good or bad.”

日本語訳

「罪というものは自然状態では考えられず、市民状態においてのみ、何が善で何が悪かが共同の合意によって定められるときに存在する」

解説

この言葉は、スピノザの自然状態と市民状態の区別を明確に示している。彼にとって自然状態における人間は、ただ自己保存の本能(コナトゥス)に従って生きる存在であり、そこには絶対的な「罪」という概念は存在しない。罪や悪は自然そのものにはなく、社会的な合意や制度の中で初めて成立する規範的概念なのである。

この思想は、スピノザの政治哲学と深く関わっている。彼によれば、人間が共同体を形成し、市民状態に入るとき、人々は共通の安全と秩序のために「善と悪」を取り決める。このとき違反行為は「罪」とされるが、それは自然的な必然からではなく、社会契約と共同合意によるものである。したがって罪は人間社会に固有の概念であり、自然の中に普遍的に存在するものではない。

現代においても、この洞察は重要である。法律や道徳は時代や社会によって異なり、ある社会で罪とされる行為が別の社会では容認されることもある。スピノザの言葉は、罪や道徳的評価が自然の本質からではなく、社会的合意によって形成される相対的なものであることを鋭く指摘している。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?

「スピノザ」の前後の名言へ


申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最も新しい 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る