「私は自然に美や醜、秩序や混乱を帰することはないと警告しておきたい。美しい、醜い、秩序立っている、混乱していると呼ばれるのは、ただ我々の想像との関係においてのみである」

- 1632年11月24日~1677年2月21日(44歳没)
- オランダ出身(ポルトガル系ユダヤ人)
- 哲学者、合理主義思想家
英文
”I would warn you that I do not attribute to nature either beauty or deformity, order or confusion. Only in relation to our imagination can things be called beautiful or ugly, well-ordered or confused.”
日本語訳
「私は自然に美や醜、秩序や混乱を帰することはないと警告しておきたい。美しい、醜い、秩序立っている、混乱していると呼ばれるのは、ただ我々の想像との関係においてのみである」
解説
この言葉は、スピノザの自然観と価値判断の相対性を端的に示している。彼にとって自然は必然の法則によって存在し、そこに美醜や秩序・混乱といった価値は本来含まれない。人間が自然にそうした評価を与えるのは、感覚や想像力を通じた主観的投影にすぎない。つまり、美や秩序は自然そのものに属するのではなく、人間の心のあり方に依存する。
この考え方は、スピノザの決定論的世界観と整合する。自然は神の必然性の表現であり、そこには人間的な評価基準を超えた中立的な秩序がある。したがって、ある現象を「混乱」と見るのは、人間がその因果関係を理解できていないからであり、実際にはすべてが必然に従っている。秩序と混乱、美と醜といった二元的判断は、人間の想像の限界から生じるのである。
現代においても、この視点は重要である。自然災害を「混乱」と見なすのは人間にとっての不利益ゆえであり、宇宙にとっては必然的な現象である。また芸術や文化における美醜の基準も、社会や時代によって異なる。スピノザの言葉は、自然を人間中心的に評価することを戒め、理性による理解へと導く哲学的態度を教えている。
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