「今、我々の政治がこれほどまでに厳しく、事実や科学、議論が常に勝利していないように見える一因は、私たちが恐れているときに必ずしも冷静に考えられるようには本能的にできていないからだ。そして今、この国は恐れている」

1961年8月4日~
アメリカ合衆国出身
政治家、弁護士、作家
バラク・オバマは、アメリカ合衆国第44代大統領として、2009年から2017年まで務めた人物である。
最大の功績は、医療保険制度改革、いわゆるオバマケアを成立させたことであり、数千万人の無保険者に保険加入の道を開いた。また、パリ協定への参加を主導し、気候変動対策にも取り組んだ。外交面ではキューバとの国交正常化を実現し、イラン核合意にも署名した。
しかし、政策推進にあたり議会との対立が激化し、分断を深めたとの批判もある。人種問題や中東政策への対応も賛否が分かれている。彼の理想主義的な演説と実務とのギャップを指摘する声も存在する。
英文
“Part of the reason that our politics seems so tough right now and facts and science and argument does not seem to be winning the day all the time is because we’re hardwired not to always think clearly when we’re scared. And the country’s scared.”
日本語訳
「今、我々の政治がこれほどまでに厳しく、事実や科学、議論が常に勝利していないように見える一因は、私たちが恐れているときに必ずしも冷静に考えられるようには本能的にできていないからだ。そして今、この国は恐れている」
解説
この発言は、バラク・オバマが現代政治の混乱と理性の低下について、人間の本能的な恐れの感情を原因の一つとして分析したものである。彼は、恐怖に支配されると人々は冷静な判断力を失い、事実や科学に基づく議論が力を持ちにくくなることを指摘している。特に「we’re hardwired not to always think clearly when we’re scared(恐れているとき、冷静に考えるようには本能的にできていない)」という表現は、感情が理性を凌駕する人間の性質への深い洞察を示している。
背景には、オバマ政権下で進行していた経済不安、テロへの恐怖、社会変動に対する不安感など、アメリカ社会を覆っていた広範な恐怖と不安がある。オバマは、政治の硬直化や過激な言説の背景に、理性ではなく恐怖に突き動かされる社会心理があることを認識し、それにどう対処するかを課題として捉えた。この発言は、健全な民主主義のためには恐怖を乗り越え、理性を回復する努力が必要であることを訴えている。
現代においてもこの分析は極めて重要である。たとえば、フェイクニュースや陰謀論が拡散する社会において、オバマのこの発言は、恐怖に支配されず、冷静さと理性を保つことこそが民主主義を守る道であるという普遍的な教訓を力強く伝えており、市民一人ひとりに自己制御と批判的思考を促すメッセージとなっている。
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