「すべての人に善をなすことができない以上、時や場所、状況の偶然によってあなたとより密接に結ばれた人々に特別な注意を払うべきである」

- 354年11月13日~430年8月28日(75歳没)
- ローマ帝国(現アルジェリア)出身
- 神学者、哲学者、キリスト教教父、ラテン教父
英文
”Since you cannot do good to all, you are to pay special attention to those who, by the accidents of time, or place, or circumstances, are brought into closer connection with you.”
日本語訳
「すべての人に善をなすことができない以上、時や場所、状況の偶然によってあなたとより密接に結ばれた人々に特別な注意を払うべきである」
解説
この言葉は、善を行うべき相手を見極める実践的な倫理の指針を示している。アウグスティヌスは、人間が有限な存在である以上、全人類に平等に関わることは不可能であるという現実を受け入れた上で、神の摂理によって近くに置かれた人々に対して、より深い愛と責任を注ぐことが道義的に求められると主張する。
この考え方は、愛の普遍性と隣人愛の具体性の両立を目指すキリスト教的倫理観に基づいている。抽象的な「すべての人への善行」は美徳であるが、実際には「出会った人」「身近にいる人」こそが、私たちが手を差し伸べるべき具体的な隣人である。そのため、偶然に見える出会いや関係も、神の意志の表れと見なし、その人に誠実に向き合うことが信仰的義務となる。
現代においてもこの言葉は、人道援助、福祉、日常的な人間関係において有効な倫理原則となる。私たちはすべての困っている人を助けることはできないが、今、目の前にいる人への対応こそが善の実現の場である。この言葉は、普遍的な愛の理念を、日々の具体的な行動へと落とし込む智慧を示している。
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