「殉教者を作るのは刑罰ではなく、その原因である」

アウグスティヌス(画像はイメージです)
アウグスティヌス(画像はイメージです)
  • 354年11月13日~430年8月28日(75歳没)
  • ローマ帝国(現アルジェリア)出身
  • 神学者、哲学者、キリスト教教父、ラテン教父

英文

”It is not the punishment but the cause that makes the martyr.”

日本語訳

「殉教者を作るのは刑罰ではなく、その原因である」

解説

この言葉はアウグスティヌスの『説教集(Sermones)』に見られる思想を要約した表現である。彼は殉教を単なる苦難の受忍と区別し、その苦しみがどのような理由によって受け入れられているかを重視した。つまり、暴力や処刑を受けたからといって誰もが殉教者となるわけではなく、神への信仰のために苦しみを受け入れることこそが殉教の本質であると説いたのである。

歴史的背景として、アウグスティヌスはローマ帝国時代の迫害や殉教者の伝承を熟知していた。彼は殉教を安易に英雄視することを避け、真の殉教者とは信仰という原因を持って苦難に臨む者だと定義することで、教会の信仰理解を深化させた。

現代においても、この言葉は普遍的な意味を持つ。苦難や犠牲そのものが価値を持つのではなく、それを引き受ける理由や目的にこそ価値があるという洞察は、宗教的文脈を超えて適用できる。社会運動や個人の自己犠牲においても、動機の正当性がその行為の意味を決定するというアウグスティヌスの指摘は、今日なお鋭い倫理的示唆を与えている。

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