「福音の中で自分の好むものだけを信じ、好まぬものを退けるなら、それは福音を信じているのではなく、自分自身を信じているのだ」

アウグスティヌス(画像はイメージです)
アウグスティヌス(画像はイメージです)
  • 354年11月13日~430年8月28日(75歳没)
  • ローマ帝国(現アルジェリア)出身
  • 神学者、哲学者、キリスト教教父、ラテン教父

英文

”If you believe what you like in the gospels, and reject what you don’t like, it is not the gospel you believe, but yourself.”

日本語訳

「福音の中で自分の好むものだけを信じ、好まぬものを退けるなら、それは福音を信じているのではなく、自分自身を信じているのだ」

解説

この言葉はアウグスティヌスの名言としてよく紹介されるが、実際の著作に同一の文言は確認されていない。彼の思想を後世において要約した表現と考えられる。アウグスティヌスは聖書解釈において、人間の恣意的な選択を戒め、聖書全体を神の言葉として受け入れる必要性を繰り返し説いた。そのため、この言葉は彼の考えを端的に示すパラフレーズと見ることができる。

背景には、4世紀から5世紀にかけての異端論争がある。当時、多くの人々が自らの思想に都合の良い形で聖書を切り取り利用していた。アウグスティヌスはこれに対して、信仰の基準は個人の好みではなく神の啓示そのものであると強調した。この態度は教会の正統性を守る役割を果たした。

現代においても、この言葉は普遍的な意味を持つ。人はしばしば思想や制度を自分の都合の良い部分だけ受け入れ、都合の悪い部分を無視しがちである。しかしそれでは真の理解には至らない。全体を受け入れる姿勢こそが真の信仰や誠実な探求に必要であるという警告は、宗教に限らず、学問や倫理観においても重要な示唆を与えている。

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