「神は、悪が存在しないようにするよりも、悪から善を生じさせる方が良いと判断された」

アウグスティヌス(画像はイメージです)
アウグスティヌス(画像はイメージです)
  • 354年11月13日~430年8月28日(75歳没)
  • ローマ帝国(現アルジェリア)出身
  • 神学者、哲学者、キリスト教教父、ラテン教父

英文

”God judged it better to bring good out of evil than to suffer no evil to exist.”

日本語訳

「神は、悪が存在しないようにするよりも、悪から善を生じさせる方が良いと判断された」

解説

この言葉はアウグスティヌスの『恩寵と自由意志』や『神の国』に展開される思想を要約した表現である。彼は悪の存在を説明する中で、悪そのものは被造物の自由意志の乱用から生じるが、神はそれすらも支配して善の目的に用いると説いた。つまり、悪は神の創造の本質ではなく、善の欠如であるが、それを通して神の救済計画がより明らかになるというのが彼の立場である。

この考えは、悪の存在を前にした神義論(theodicy)の重要な回答の一つである。なぜ全能で善なる神が悪を許すのかという問いに対し、アウグスティヌスは、悪を通じてしか現れない善、たとえば忍耐・赦し・救済の偉大さを挙げた。神は悪を創造されたのではなく、悪を許容しつつそれを超える善を導き出すと考えたのである。

現代においても、この思想は大きな示唆を与える。苦難や不正に直面したとき、それ自体は悪であっても、そこから成長や和解、連帯といった善が生じうる。悪の存在を単に否定するのではなく、それを超えて善を引き出す神の働きというアウグスティヌスの洞察は、人生の困難を理解し受け止める枠組みとして今なお意義を持つ。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?

「アウグスティヌス」の前後の名言へ


申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最も新しい 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る