「ある事柄は下手に語られたからといって必ずしも偽ではなく、また華麗に語られたからといって必ずしも真実ではない」

アウグスティヌス(画像はイメージです)
アウグスティヌス(画像はイメージです)
  • 354年11月13日~430年8月28日(75歳没)
  • ローマ帝国(現アルジェリア)出身
  • 神学者、哲学者、キリスト教教父、ラテン教父

英文

”A thing is not necessarily true because badly uttered, nor false because spoken magnificently.”

日本語訳

「ある事柄は下手に語られたからといって必ずしも偽ではなく、また華麗に語られたからといって必ずしも真実ではない」

解説

この言葉は、表現の巧拙と真理そのものは無関係であるというアウグスティヌスの思想を示している。彼は若い頃、雄弁術に魅了され修辞学を学んだが、後にそれが真理を覆い隠す危険性を持つことを痛感した。『告白』や『キリスト教教師論(De Doctrina Christiana)』においても、真理は語り手の技術や華やかさに依存せず、むしろ内容そのものに価値があると説いている。

この考えは、当時のローマ社会における弁論術の地位に対する批判でもある。人々はしばしば説得力ある弁舌や華麗な言葉に心を奪われ、実際の真理を見失っていた。アウグスティヌスはこれに対し、真理は素朴な言葉の中にも宿り得るし、華やかな言葉に包まれていても偽りである可能性があると警告したのである。

現代においても、この洞察は重要である。メディアや広告、政治演説において、華麗な表現や巧妙な言葉はしばしば人々を惑わす。一方で、拙い表現の中にこそ誠実な真実が含まれることもある。真理の価値は言葉の装飾ではなく、その実質にあるというアウグスティヌスの教えは、批判的思考を持つ上で今なお有効である。

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