「魂と身体が一体であるかどうかを問うのは、蝋とそこに刻まれた印影が一体かどうかを問うのと同じくらい無意味である」

- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者、科学者、学園「リュケイオン」設立者
英文
“We must no more ask whether the soul and body are one than ask whether the wax and the figure impressed on it are one.”
日本語訳
「魂と身体が一体であるかどうかを問うのは、蝋とそこに刻まれた印影が一体かどうかを問うのと同じくらい無意味である」
解説
この名言はアリストテレスの『霊魂論』における魂と身体の関係に関する哲学的見解を端的に表現している。彼は、魂と身体を分離された二つの実体と見るプラトン的な二元論を退け、魂は身体の「形相(エイドス)」であり、身体の潜在的能力を現実化する原理であると主張した。この蝋と印影の比喩は、魂と身体が本質的に一体であることを直感的に示すために用いられている。
ここでの論点は、魂を身体に付随する独立した存在ではなく、身体が生きていることそのものを定義づける形式的原理として理解することである。つまり、魂がなければ身体は単なる物質であり、魂は身体の働きそのものである。蝋に刻まれた印影が蝋そのものから切り離せないように、魂と身体もまた分けて語ることは本質を見誤ることになる。
この名言は現代の心身問題(心と身体の関係)や意識の哲学においても重要な視座を提供している。アリストテレスの立場は、心身の一元論的アプローチとして注目され、神経科学や心理学における身体性の理解にも通じる。彼のこの洞察は、人間の存在を抽象的要素の寄せ集めではなく、統一された全体としてとらえるべきだという、極めて先見的かつ実践的な哲学を示している。
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