「私たちは恐れている人や尊敬している人には、その恐れや尊敬がある限り怒りを感じない。恐怖と怒りを同時に抱くことはできないからである」
- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者・科学者で学園「リュケイオン」の設立者
- プラトンの弟子で、論理学、生物学、政治学、倫理学などにおいて体系的な知識を構築し、西洋の思想や科学の発展に大きな影響を与えた
英文
”We are not angry with people we fear or respect, as long as we fear or respect them; you cannot be afraid of a person and also at the same time angry with him.”
日本語訳
「私たちは恐れている人や尊敬している人には、その恐れや尊敬がある限り怒りを感じない。恐怖と怒りを同時に抱くことはできないからである」
解説
この言葉は、怒りの感情と恐れや尊敬の感情が相反するものであるとするアリストテレスの考えを表している。彼は、人間がある人物に対して恐れや尊敬を抱くとき、その人に対して同時に怒りを感じることは難しいと述べた。恐れや尊敬といった感情は、相手に対するある種の敬意や距離を生み、怒りの感情が芽生えるのを抑制する。このため、人間の感情は相手に対する感情の種類によって異なった反応を引き起こし、同時に異なる感情を抱くことが難しいとアリストテレスは考えた。
アリストテレスの考えでは、恐れや尊敬は人間関係における抑制の役割を果たすとされる。たとえば、相手に対して恐怖や敬意を感じると、その人への攻撃的な感情が抑えられ、怒りを感じることが少なくなる。恐れは自己防衛の感情であり、尊敬は他者への配慮や評価から生まれる感情であるため、どちらの感情も、他者に対する積極的な対立感情を抑える働きがある。したがって、尊敬や恐怖を抱く相手に対しては、怒りが湧きにくくなり、冷静で敬意を持った態度が保たれる。
具体例として、上司や師、著名人などに対する感情が挙げられる。たとえば、仕事で尊敬する上司にミスを指摘されたとしても、その人に対して尊敬の念を持っている限り、怒りよりも敬意が優先され、自己の成長として受け止めることができる。同様に、恐怖を感じる相手に対しては、怒りよりも回避や警戒心が優先されるため、怒りが湧くことが少ない。このように、相手に対する尊敬や恐怖の感情が強いほど、その人に対する怒りの発生が抑制される。
現代においても、アリストテレスのこの考えは、感情コントロールや対人関係の理解において重要な指針となっている。多様な人間関係において、他者に対して尊敬や恐れを持つことで、対立や怒りを抑えることができ、冷静で調和の取れた関係が築かれる。また、自己の感情を理解し、相手に対してどのような感情を抱いているかを把握することで、感情的な対立を避け、建設的な関係を維持することが可能となる。
アリストテレスのこの言葉は、恐れや尊敬の感情が怒りを抑制する作用を持つことを教えている。恐れや尊敬を持つ相手に対しては、感情的に冷静さが保たれるため、対人関係においての抑制と自己理解が促される。この視点は、感情のコントロールと健全な人間関係の構築に役立つ重要な教えである。
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