「真実とおおよそ真実なものは同じ能力によって理解される。また、人間は真実を本能的に感じ取り、通常は真実に到達するものである。ゆえに、真実に対して良い推測ができる人は、確率についても良い推測ができる傾向にある」
- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者・科学者で学園「リュケイオン」の設立者
- プラトンの弟子で、論理学、生物学、政治学、倫理学などにおいて体系的な知識を構築し、西洋の思想や科学の発展に大きな影響を与えた
英文
”The true and the approximately true are apprehended by the same faculty; it may also be noted that men have a sufficient natural instinct for what is true, and usually do arrive at the truth. Hence the man who makes a good guess at truth is likely to make a good guess at probabilities.”
日本語訳
「真実とおおよそ真実なものは同じ能力によって理解される。また、人間は真実を本能的に感じ取り、通常は真実に到達するものである。ゆえに、真実に対して良い推測ができる人は、確率についても良い推測ができる傾向にある」
解説
この言葉は、真実と真実に近いものを理解するために人間が備えている知覚や思考の能力について語っている。アリストテレスは、真実だけでなく、ほぼ真実といえるものも同じ能力で理解できると述べている。この「同じ能力」とは、人間の理性や直観を指し、それによって人々は事実や現実を理解しようとする。彼はまた、人間には真実を見分ける本能的な感覚が備わっており、最終的には多くの場合において真実に辿り着くことができると主張している。この点で、真実を探求する意志と知恵は人間に備わっているものだと示している。
さらに、この名言では、真実に対する洞察力が確率に対する推測力にも通じることが述べられている。真実について優れた洞察を持つ人間は、ある程度の確率的な推測を行う際にも的確な判断ができる可能性が高い。これは、真実の本質を理解することで、未来の出来事や可能性についても論理的な予測が可能になるという考えを示唆している。アリストテレスは、単なる経験や知識の蓄積だけでなく、人間の知覚的な鋭さや理論的な洞察力が確率の推測に繋がると考えていた。
例えば、気象予報士は日々の天気を正確に予測するために膨大なデータを使用するが、その精度を高めるためには、長年の経験や過去の気象パターンに対する深い理解が必要である。こうした予測士の能力は、真実とほぼ真実である情報(過去のデータや気象モデル)を正確に読み解き、それを基に将来の確率的な天候予測を行う点で、アリストテレスの言葉と一致している。また、医師の診断も例に挙げられる。医師は、患者の症状や検査結果から可能性の高い病気を推測する際、過去の臨床経験と知識を総合して判断を下す。この際、患者の症状に関する真実だけでなく、そこから推測できる「おおよそ真実」についても把握し、確率的な予測や診断を行う。
背景として、アリストテレスの哲学は、人間の知性と論理に大きな信頼を置いていた。彼は知識を段階的に構築し、仮説的な推論や演繹的な思考を通じて真実に近づくプロセスを重視していた。現代の科学的思考においても、このアプローチは重要であり、科学的仮説の検証やデータ解析に基づく予測と重なる部分が多い。
現代においても、この言葉は日常生活や科学的な判断に役立つ視点を提供する。人々が真実に基づいて意思決定を行うとき、正確な情報だけでなく、近似的なデータや予測の重要性も認識される。さらに、ビジネスや社会科学においても、予測力や推測の正確性は、長期的な成功やリスク管理において欠かせない要素である。このため、アリストテレスの言葉は、真実への洞察力が備わっていることの重要性を強調し、それが未来の展望や確率的な思考に影響を与えることを示しているといえる。
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