「ある動物は大きな鳴き声を発し、あるものは沈黙し、またあるものは声を持つが、それが言葉として表現できる場合とできない場合がある。騒がしい動物と静かな動物、音楽的なものとそうでないものもいるが、繁殖期にはたいていの動物が騒がしくなる」

- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者、科学者、学園「リュケイオン」設立者
英文
“Some animals utter a loud cry. Some are silent, and others have a voice, which in some cases may be expressed by a word; in others, it cannot. There are also noisy animals and silent animals, musical and unmusical kinds, but they are mostly noisy about the breeding season.”
日本語訳
「ある動物は大きな鳴き声を発し、あるものは沈黙し、またあるものは声を持つが、それが言葉として表現できる場合とできない場合がある。騒がしい動物と静かな動物、音楽的なものとそうでないものもいるが、繁殖期にはたいていの動物が騒がしくなる」
解説
この言葉は、アリストテレスが『動物誌(Historia Animalium)』で記した動物の音声や鳴き声に関する分類的観察の一節である。彼は、動物の発声行動を細かく分類し、それを感覚・目的・生殖などの自然的原理と結びつけて理解しようとした。発声能力の有無や種類を比較することで、動物の本性や生態、進化的な適応を読み解こうとした彼の自然哲学的態度が表れている。
特に注目すべきは、繁殖期に騒がしくなる傾向に対する洞察である。これは今日の生物学でも確認されている事実であり、多くの動物が鳴き声を通じて求愛や縄張りの主張を行う。また、「言葉として表現できる場合とできない場合」という表現は、人間の言語能力と動物の音声コミュニケーションとの違いを初期的に認識していた証拠であり、アリストテレスの先見性を示している。
この名言は、動物の多様性を冷静かつ体系的に捉えようとしたアリストテレスの博物学的探究の一例であり、自然の秩序と生の現象に宿る理性の探究を今に伝える記録でもある。また、動物の声のあり方に注目することが、知性や社会性の理解に繋がるという視点は、今日の動物行動学や比較認知科学にも通じている。
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