「レトリックとは、あらゆる状況において利用可能な説得の手段を見極める能力である。それは他のいかなる技術にも属さない機能である」

• 紀元前384年～紀元前322年
• 古代ギリシャのマケドニア出身
• 哲学者、科学者、学園「リュケイオン」設立者

英文

“Rhetoric may be defined as the faculty of observing in any given case the available means of persuasion. This is not a function of any other art.”

日本語訳

「レトリックとは、あらゆる状況において利用可能な説得の手段を見極める能力である。それは他のいかなる技術にも属さない機能である」

解説

この名言は、アリストテレスが『弁論術（レトリック）』の中で提示した、レトリックの本質的な定義を表している。彼にとってレトリックとは単なる言葉の技巧ではなく、状況に応じて最も効果的な説得方法を見抜き、それを選択・行使する知的能力であった。つまり、レトリックは柔軟で実践的な判断の技術であり、普遍的な論理では捉えきれない多様な現実に対応するための手段である。

アリストテレスは、レトリックを倫理・政治・法など公共の場における実践知と深く結びつけた。論理学や詩、修辞など他の学芸はそれぞれ独自の目的を持つが、説得という目的に特化し、あらゆる主題に応用できる技術はレトリックだけであると主張した点が重要である。ここには、人間の社会性とコミュニケーション能力を哲学の中心に据えたアリストテレスの視点が表れている。

今日においても、政治的演説、広告、SNSに至るまで、言葉を用いた説得の技術は極めて重要な力を持っている。この名言は、レトリックを単なる装飾や誇張ではなく、的確な判断と戦略的思考を必要とする知的行為として再評価する視座を与えている。

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