「小さな悪には誰も注意を払わないが、それが大きくなると人目を引くようになる」

• 紀元前384年～紀元前322年
• 古代ギリシャのマケドニア出身
• 哲学者、科学者、学園「リュケイオン」設立者

英文

“No notice is taken of a little evil, but when it increases it strikes the eye.”

日本語訳

「小さな悪には誰も注意を払わないが、それが大きくなると人目を引くようになる」

解説

この名言はアリストテレスの倫理的・社会的悪の認識とその進行性に関する鋭い観察を表している。彼は、悪徳や不正といったものが初めは微細で見過ごされやすいが、放置されることでやがて顕在化し、誰の目にも明らかになるという道理を指摘している。この考えは、『ニコマコス倫理学』や『政治学』における徳の形成と堕落の過程とも一致しており、少しの欠如や過剰が徐々に人格や社会を損なっていく危険性に通じている。

人間の感覚は、目立つものにだけ反応しやすく、日常の中に潜む小さな不正や逸脱には無自覚になりやすい。しかし、それらが積もり重なることで、取り返しのつかない事態や目に見える崩壊を招く。アリストテレスは、こうした微細な悪に対する初期段階での注意と是正の重要性を訴えている。

現代においても、個人の習慣や組織の倫理、社会制度において、初期の小さな問題が放置された結果として大きな腐敗や破綻が生じる例は枚挙にいとまがない。この名言は、悪は最初から目に見える形では現れないが、だからこそ初動が重要であるという警告であり、倫理的注意力と責任感を喚起する言葉である。

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