「ホメロスは他のすべての詩人に、巧みに嘘を語る技術を教えた」

アリストテレス
アリストテレスの名言
  • 紀元前384年~紀元前322年
  • 古代ギリシャのマケドニア出身
  • 哲学者・科学者で学園「リュケイオン」の設立者
  • プラトンの弟子で、論理学、生物学、政治学、倫理学などにおいて体系的な知識を構築し、西洋の思想や科学の発展に大きな影響を与えた

英文

”Homer has taught all other poets the art of telling lies skillfully.”

日本語訳

「ホメロスは他のすべての詩人に、巧みに嘘を語る技術を教えた」

解説

この言葉は、詩や物語における創作と虚構の役割についてアリストテレスが述べたものである。彼は、ホメロスが巧みに「嘘」、つまり虚構やフィクションを用いて物語を紡ぎ出したことで、他の詩人たちにその技術を教えたと述べている。ホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』のような叙事詩は、事実に基づくものではなく、英雄や神話的な要素が豊富に含まれているが、その「嘘」を通じて真理や人間の本質に迫る力を持つ。アリストテレスにとって、この「巧みな嘘」は単なる虚構ではなく、現実を超えて人間の心理や価値観を表現する手段として重要視された。

アリストテレスは、文学や詩が現実を離れた創作でありながらも、深い真実を伝える力を持っていると考えた。彼にとって、ホメロスの虚構は単なる嘘ではなく、読者や聴衆に普遍的なテーマや人間性についての洞察を提供するものである。虚構の中に真実が隠されているという考えは、文学や詩の力を理解する上で重要であり、読者に感動や共感を呼び起こすことで、現実の経験を超えた学びや教訓を与えるとされる。

具体例として、シェイクスピアの劇や神話文学が挙げられる。『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』といった作品は、実際の出来事ではないが、人間の悲劇や愛の複雑さを描くことで、観客に深い感情や教訓を与える。また、古代ギリシャの神話も、神々や英雄が登場する創作物でありながら、人間の価値観や道徳についての考察を提供している。こうした作品は、フィクションであるにもかかわらず、現実の人間関係や道徳に関する普遍的な真理を伝えている。

現代においても、このアリストテレスの考え方は、フィクションの価値を理解する上で重要である。映画や小説、演劇といった創作物が持つ力は、現実とは異なる物語の中で観客に深い感動や学びを提供することにある。巧みに作られた虚構は、現実を理解する手助けをし、私たちに共感や自己理解を促進する効果を持つとされている。

アリストテレスのこの言葉は、虚構や創作物が持つ力とその意義を教えている。巧みに「嘘」を語ることで、現実を超えた真実や人間の本質に迫ることができる。文学や詩が虚構でありながらも、私たちにとっての現実に深い影響を与え、学びや感動をもたらすという視点は、創作の意義を理解するための重要な洞察である。

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