「他人のものであり得る者、すなわち他人のものである者、そして理性を理解するには十分であるが、それを持つには至らない者は、生まれついての奴隷である」
- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者・科学者で学園「リュケイオン」の設立者
- プラトンの弟子で、論理学、生物学、政治学、倫理学などにおいて体系的な知識を構築し、西洋の思想や科学の発展に大きな影響を与えた
英文
”He who can be, and therefore is, another’s, and he who participates in reason enough to apprehend, but not to have, is a slave by nature.”
日本語訳
「他人のものであり得る者、すなわち他人のものである者、そして理性を理解するには十分であるが、それを持つには至らない者は、生まれついての奴隷である」
解説
この名言は、生まれついての奴隷という概念についてアリストテレスが述べたものである。彼は、人間の中には、生まれつき他者に従属するように運命づけられた者がいると考えた。ここでいう「奴隷」とは、単に支配される者を指すのではなく、理性の持ち方に違いがあると考えた結果である。アリストテレスの時代において、理性を持つことは人間としての能力や独立性の象徴とされていたが、彼は、理性を完全に発揮できず、他者の意志に依存する存在がいると主張した。
アリストテレスの「奴隷」の概念は、理性を理解するがそれを完全に支配する力がない者に適用された。彼はこの種の人々が自主的な判断を下す力が弱く、他者に依存することでその役割を果たすと考えた。この考え方には、古代ギリシャにおける社会的役割の厳格な区別が背景としてある。ギリシャ社会では、家庭や国家の繁栄を支えるために、特定の階級の人々が特定の役割を担い、その秩序を維持することが求められた。アリストテレスの考えは、この秩序の一環としての奴隷制度の正当化を意図していたと考えられる。
現代においては、アリストテレスのこの思想は倫理的に多くの議論を呼ぶものである。現代の価値観から見ると、人間の価値は平等であり、理性を持つかどうかにかかわらず尊重されるべきとされるため、この考えは容認されがたい。しかし、当時の視点から考えると、アリストテレスは理性と社会的秩序の関係を重視しており、これがその社会における安定に寄与するものであると捉えられていた。
例えば、現代における教育の重要性は、すべての人が自主的に考え、自己決定する力を持つべきだという考えに基づいている。教育がないままでは他者の意見に従いやすく、自己の理性を発揮する機会が制限される。このため、現代では「理性を育むこと」が社会的に重要視され、かつての奴隷的な考え方を払拭しようとする動きがあるといえる。
アリストテレスのこの言葉は、個人の理性の使い方と社会的な役割が持つ重要性を強調しているが、現代の視点からはその内容には賛否がある。ただし、社会の秩序を維持するために各人が異なる役割を持つという考えは、組織や共同体の運営においても参考になる一面を持つといえるだろう。
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