「神経症者は、自らの虚構という十字架に磔にされている」

- 1870年2月7日~1937年5月28日
- オーストリア出身
- 精神科医、心理学者
英文
“The neurotic is nailed to the cross of his fiction.”
日本語訳
「神経症者は、自らの虚構という十字架に磔にされている」
解説
この言葉は、アドラー心理学における虚構論的観点(fictionalism)を象徴的に表現している。アドラーは、人間が自らの人生を導く際、現実の事実に基づくというよりも、自分で作り上げた主観的な信念や人生観—すなわち「虚構」—に基づいて行動すると考えた。神経症的な人はその虚構に強くとらわれており、柔軟な行動ができず、自らを縛る信念体系の犠牲者となっている。
この「虚構」は、たとえば「私は価値のない人間だ」「他人は信じられない」「愛されたければ完璧でなければならない」といった、根拠のない極端な自己概念や世界観である。神経症的な人はこれらの信念を現実のように扱い、その信念に沿った行動や回避戦略を取り続ける。こうして彼らは、人生の選択肢を狭め、自らの成長や幸福を妨げてしまうのである。
この名言は、アドラーの治療的アプローチにおける核心的視点も示している。すなわち、心理的解放とは、虚構に気づき、それを手放し、新しい信念や目的に基づく生き方へと転換することにある。アドラーは、人は変わる力を持っており、自分を縛る架空の十字架から降りることが可能であると確信していたのである。
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