「いわば“親指を下に向ける”ように、現実の人間を理想と比較して貶めることは、神経症的な人が最も効果的に使う態度の一つである。そうすることで、好きなだけ他人を価値のないものとして扱うことができるからである」

- 1870年2月7日~1937年5月28日
- オーストリア出身
- 精神科医、心理学者
英文
“It is one of the most effective attitudes of the neurotic to measure thumbs down, so to speak, a real person by an ideal, since in doing so he can depreciate him as much as he wishes.”
日本語訳
「いわば“親指を下に向ける”ように、現実の人間を理想と比較して貶めることは、神経症的な人が最も効果的に使う態度の一つである。そうすることで、好きなだけ他人を価値のないものとして扱うことができるからである」
解説
この言葉は、アドラーが分析した神経症的性格の特徴的な対人態度を示している。神経症的な人は、他人をある抽象的で手の届かない理想像と比較することで、実在の人物を意図的に低く評価する傾向を持つ。これは自分の劣等感や不安を覆い隠すための防衛機制として働き、他人を「理想に届かない存在」として裁くことで、自分の優位性や安全圏を保とうとする。
しかし、このような態度は現実の人間関係を破壊し、自己成長の妨げとなる。誰一人として完璧な理想に達していない以上、この比較は常に他者を貶める道具となり、他人への共感や理解を阻害する。また、それによって得られる優越感は本物の自己肯定ではなく、根底にある劣等感の過剰補償でしかない。
現代においても、この態度はSNS上の理想像や「完璧な人生」との比較によって再生産されている。アドラーのこの指摘は、理想によって人を裁く行為が、実は自分自身を守るための攻撃であるという洞察を与えるものであり、他人をあるがままに受け入れることが人間的成熟への第一歩であるという教訓を含んでいる。
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