「結婚は性欲を調節することには有効である。が、恋愛を調節することには有効でない」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「結婚は性欲を調節することには有効である。が、恋愛を調節することには有効でない」
解説
この名言は、結婚という制度と人間の根源的な感情とのあいだにある隔たりを鋭く指摘している。芥川は、結婚が生理的な欲望――すなわち性欲の管理や社会的秩序の維持には有効であると認めながらも、恋愛という情熱的で本質的に自由な感情を制度によって律することはできないと断じている。つまり、結婚は肉体には届いても、心には届かないという二元論がここにある。
この言葉には、芥川の人間性に対する冷徹な観察と、恋愛という情念に対する深い洞察が反映されている。大正から昭和初期の時代背景では、結婚はまだ家制度や社会的契約の色合いが強く、恋愛と結婚が必ずしも一致するものではなかった。芥川はその不一致を、単なる社会批判ではなく、人間の本質的矛盾として見つめている。そのため、この名言は制度への挑戦というより、制度と感情の相互不可侵性を認めた達観といえる。
現代においても、この言葉は変わらぬ意義を持つ。恋愛結婚が一般的になったとはいえ、結婚生活の中で感情の熱が冷める現実や、制度としての婚姻が情熱の持続を保証しないことは多くの人が経験する。芥川のこの名言は、結婚と恋愛を安易に同一視することへの警鐘であり、感情の自由と制度の限界を見極める視点を我々に与えてくれるのである。
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