「棘のない薔薇はあっても、受苦を伴わない享楽はない」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「棘のない薔薇はあっても、受苦を伴わない享楽はない」
解説
この名言は、美しさや喜びに満ちた享楽には、必ず何らかの苦しみや代償が伴うという芥川の人生観を示している。前半の「棘のない薔薇はあっても」という比喩は、表面的には安全で美しく見えるものが存在する可能性を認めているが、後半でそれを反転させ、真に深い享楽には、苦しみが不可避であるという逆説を提示している。
芥川は、享楽というものが単なる快楽ではなく、深く人間的な感受性や経験を通じて得られる複雑な感情の結晶であると見ていた。それゆえ、真の享楽は、葛藤や痛み、喪失や孤独といった感情と密接に結びついている。この考え方には、浅薄な幸福や快楽を疑う態度と、人生の深層に宿る陰影を肯定する美学が込められている。
現代においても、この言葉は重要な意味を持つ。幸福や快適さを追い求める風潮の中で、芥川のこの名言は、喜びが苦しみを経てこそ本物となること、安易な享楽は真の満足にはつながらないことを私たちに教えている。美しいものほど痛みを内包しており、苦しみを引き受けた先にこそ深い喜びがあるという、芥川の詩的かつ哲学的な感性が、この一文には凝縮されているのである。
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