「我々を走らせる軌道は、機関車にはわかっていないように我々自身にもわかっていない。この軌道もおそらくはトンネルや鉄橋に通じていることであろう」

芥川龍之介の名言・格言・警句(画像はイメージです)
芥川龍之介の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1892年3月1日~1927年7月24日
  • 日本出身
  • 小説家、評論家

原文

「我々を走らせる軌道は、機関車にはわかっていないように我々自身にもわかっていない。この軌道もおそらくはトンネルや鉄橋に通じていることであろう」

解説

この言葉は、人間の生や運命の不可知性を、機関車の走る「軌道」に喩えた比喩的表現である。機関車は自らの意志で進路を選んでいるわけではなく、敷かれたレールに従って進むのみである。我々人間も同様に、知らず知らずのうちに「何か」に導かれ、方向づけられて生きているのではないかという洞察が込められている。

ここで言う「軌道」とは、社会的制約・無意識の衝動・宿命的な環境など、個人の力ではコントロールしきれない人生の構造を指す。その軌道が「トンネルや鉄橋に通じている」とは、人生には暗く閉ざされた困難(トンネル)や、危険と試練(鉄橋)を渡る局面が必ずあることを暗示する。

つまり芥川はこの一文で、人間の自由意志の限界と、それでもなお進まざるを得ない人生の道程を冷静に見つめている。我々は自分の進む先を本当には知らず、理解もせず、それでも前進し続ける存在なのだという、静かで深い諦観がにじむ一言である。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?

「芥川龍之介」の前後の名言へ


申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最も新しい 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る