「我々の機関車を見るたびにおのずから我々自身を感ずるのは必ずしもわたしに限ったことではない。斎藤緑雨は箱根の山を越える機関車の『ナンダ、コンナ山、ナンダ、コンナ山』と叫ぶことを記している」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「我々の機関車を見るたびにおのずから我々自身を感ずるのは必ずしもわたしに限ったことではない。斎藤緑雨は箱根の山を越える機関車の『ナンダ、コンナ山、ナンダ、コンナ山』と叫ぶことを記している」
解説
この言葉には、機関車という近代的機械に自我や人間性を重ねて見る視点が語られている。芥川は、機関車の力強くも懸命な動きに、どこか人間の努力や苦悩、あるいは自我の葛藤を投影することが、彼一人の感覚ではないことを指摘している。
引用された斎藤緑雨の「ナンダ、コンナ山、ナンダ、コンナ山」という表現は、機関車が山を越える際の唸り声を擬人化したものであり、まるで困難に挑む人間のような不平や気負いを感じさせる。ここには、明治期以降の近代化に対する感受性があり、機関車は単なる輸送手段ではなく、人間そのもの、あるいは人間の精神の象徴とも捉えられていた。
現代においても、人はしばしば物や機械に自己を投影し、感情を重ねる。たとえば働くロボットに共感したり、スマートフォンに人格を見出すこともある。芥川のこの観察は、人間の感性がいかに外界と内面を結びつけて世界を意味づけているかを示すものであり、文学的でありつつ、心理的な普遍性を備えた洞察でもある。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?
「芥川龍之介」の前後の名言へ
申し込む
0 Comments
最も古い