「小説家たらんとするものは自動車学校を卒業せざる運転手の自動車を街頭に駆るがごとし。一生の平穏無事なるを期するべからず」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「小説家たらんとするものは自動車学校を卒業せざる運転手の自動車を街頭に駆るがごとし。一生の平穏無事なるを期するべからず」
解説
この名言は、小説家という職業の危険性と予測不可能性を、芥川が辛辣かつ鮮やかな比喩によって表現したものである。小説家を志す者は、自動車学校での訓練も受けぬまま、公道に車を走らせる無免許運転手に例えられている。これはつまり、小説家とは体系的な教育や保証のないまま、社会や人生を題材に筆を進めなければならない存在であり、常に事故や混乱の危険と隣り合わせであるということを意味している。
この言葉には、芥川の自己省察と文学への覚悟が込められている。彼自身が東京帝国大学で学びながらも、創作に関しては常に模索と不安の中にあり、文壇での評価や内面の葛藤に苦しんだ経験を持つ。文学は予測不能な旅であり、成功や安定を保証するものではなく、むしろ精神的・社会的なリスクを負う道であるという認識が、この名言の根底にある。
現代においても、この言葉は文学のみならず、創造的な生き方すべてに通じる警句である。創作や表現の道に進む者は、形式的な訓練や安定した収入の外にあり、自らの感受性と知性を頼りに進まねばならない。芥川のこの言葉は、小説家とは本質的に危うさを内包した存在であり、その危険こそが創作の原動力であるという、鋭い真理を突いているのである。
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