「僕は肥った人の手を見ると、なぜか海豹の鰭を思い出している」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「僕は肥った人の手を見ると、なぜか海豹の鰭を思い出している」
解説
この名言は、芥川の観察力と連想の鋭さ、そしてユーモラスで皮肉な感覚をよく表している。肥えた人の手を見たときに海豹(アザラシ)の鰭を思い出すというのは、単なる外見上の類似を超えて、人間を動物的な視点で見る彼の冷静な目線を示している。美醜や滑稽さを容赦なく見抜く作家の視点が、この一文に凝縮されている。
また、ここには人間存在に対する距離感や冷淡さ、あるいは諧謔精神も垣間見える。「鰭」という語が持つ非人間的・滑稽な印象を通じて、芥川は肥えた人間の手を一種の異物や奇観として捉えている。それは日常の中に潜む奇妙さを瞬時に言語化する才能であり、同時に他者との心理的な隔たりを感じさせる表現でもある。
現代においても、ふとした比喩や連想がユーモアや風刺として使われることは多い。この一言は、美的でも道徳的でもない視点から現実を切り取る芥川の感性をよく伝えている。人間を観察する眼差しの中に、どこか冷酷で、しかし詩的でもある世界が立ち上がる、芥川らしい一文である。
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