「僕たちは、時代と場所との制限をうけない美があると信じたがっている」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「僕たちは、時代と場所との制限をうけない美があると信じたがっている」
解説
この名言は、人間が普遍的な美の存在を信じたがる心情を指摘している。芥川はここで、美というものが時代や文化の違いを超えて存在するのかどうかという根源的な問いを投げかけている。しかし、「信じたがっている」という表現には、それが願望にすぎない可能性への懐疑が含まれており、美の普遍性への懐疑と同時に、それを信じたいという人間の欲求が交差していることを示している。
芥川は西洋と東洋、古典と近代など、多様な文化や時代の美に触れていた文学者である。彼は、ある美が万人に通じるとは限らないという現実を知りつつも、それでもなお、超時代的・超文化的な美を信じたいという人間の性を見つめていた。この言葉には、理知的な懐疑と感性的な信仰のあいだで揺れる知識人のジレンマがにじんでいる。
現代においても、芸術やデザインにおいて「普遍的な美」への憧れは根強くある。だがそれは多くの場合、自分の価値観や美意識が他者にも通じるはずだという前提に立っている。芥川のこの名言は、美とは本当に時代や文化を超えられるのか、あるいはそれを信じたがる我々の欲望こそが美の本質ではないのかという深い問いを投げかけているのである。
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