「人生は狂人の主催に成ったオリムピック大会に似たものである」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「人生は狂人の主催に成ったオリムピック大会に似たものである」
解説
この名言は、人生というものの滑稽さ、不条理さ、そして無秩序さを、芥川が皮肉と諦念を込めて描き出した比喩である。オリンピックは本来、秩序・調和・栄光・公正な競技を象徴する国家的・国際的イベントである。そのような厳粛かつ栄誉ある大会が、もし「狂人」の手によって主催されたならば、秩序は失われ、競技は滑稽な混乱に変わり、目的と意味は崩壊する。芥川は、まさにそうした構造が現実の「人生」そのものであると冷笑している。
この言葉には、芥川が生涯抱き続けた人生への不信感と理性への限界認識が色濃く表れている。彼は、社会制度、道徳、成功といったものが、あたかも整然としたゲームのように見えて、実は理不尽と偶然に支配された滑稽な競争にすぎないのではないかと見ていた。「狂人」とは、そうした混沌を象徴する存在であり、我々はその狂人の設計した「競技」に無理やり参加させられているにすぎない、という虚無的かつ風刺的な視点がここにはある。
現代においても、この言葉は示唆に富んでいる。社会のルールや成功の定義、人生の目標とされるものが、本当に意味のある競技なのか、それとも狂気に満ちた枠組みの中で踊らされているに過ぎないのか――そうした問いを鋭く投げかけてくる。芥川のこの名言は、人生の真面目さそのものを相対化し、我々が置かれている舞台の不条理を照らす辛辣な風刺として、今なお強い力を持っているのである。
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