「人生は一行のボオドレエルにも若かない」

芥川龍之介の名言・格言・警句(画像はイメージです)
芥川龍之介の名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1892年3月1日~1927年7月24日
  • 日本出身
  • 小説家、評論家

原文

「人生は一行のボオドレエルにも若かない」

解説

この名言は、詩の一行が持つ凝縮された美や真実が、人生全体よりも価値あるものとなりうるという、芥川の文学至上主義的な思想を端的に表現したものである。ここで言及されている「ボオドレエル」は、フランスの詩人シャルル・ボードレールであり、その象徴詩的で退廃的な美学は芥川に深い影響を与えている。芥川は、人間の生という曖昧で苦悩に満ちた存在よりも、詩の中に結晶した一瞬の美や思想の方が遥かに尊いと考えていた。

この言葉の背景には、芥川自身の人生に対する冷ややかな諦観と、美に対する絶対的な信仰がある。彼は、現実の人生が不条理や倦怠、苦しみに満ちている一方で、芸術作品はそれらを超えて秩序と永遠性を持つものとして讃えた。とりわけボードレールの詩は、人生の醜さや絶望を直視しながらも、それを美へと昇華させたものであり、芥川にとって理想の文学的在り方であった。

現代においても、この名言は芸術と生の価値を問い直す言葉として意味を持つ。日々の生活が虚しく感じられるとき、ある一節の詩や一枚の絵が、人生そのものより深い感動や真理をもたらすことがある。芥川のこの言葉は、人生を超える価値が芸術に宿ることを信じた作家の、孤独で誇り高い信念の結晶なのである。

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