「わたしは不幸にも知っている。時には嘘による外は語られぬ真実もあることを」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「わたしは不幸にも知っている。時には嘘による外は語られぬ真実もあることを」
解説
この言葉は、嘘と真実の境界が単純ではないという逆説を含んでいる。芥川は、真実を伝えるためにあえて嘘を用いなければならない状況があることを、皮肉と悲しみを込めて告白している。ここでいう「不幸」とは、そのような複雑な現実を知ってしまった精神の苦悩を指している。
文学者として、芥川は虚構によって真実を浮き彫りにするという技法をよく用いた。彼の作品では、事実そのものよりも、それをどう認識し、語るかが重視される。たとえば『藪の中』に見られるように、同じ事件でも語り手によってまったく異なる「真実」が現れる。ここには、人間の主観性や限界を前提とした上での“真実の多面性”がある。
現代においてもこの言葉は示唆に富む。厳しい現実をやわらげるための優しい嘘、または表現を守るための寓話や隠喩は、しばしば真実以上の力を持つ。嘘でなければ語れない真実があるという認識は、報道、教育、芸術など、あらゆる表現行為に深い問いを投げかけている。
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