「お前の根をしっかりとおろせ。お前は風に吹かれている葦だ。空模様はいつ何時変るかも知れない。ただしっかり踏んばっていろ。それはお前自身のためだ。同時にまたお前の子供たちのためだ。うぬぼれるな。同時に卑屈にもなるな。これからお前はやり直すのだ」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「お前の根をしっかりとおろせ。お前は風に吹かれている葦だ。空模様はいつ何時変るかも知れない。ただしっかり踏んばっていろ。それはお前自身のためだ。同時にまたお前の子供たちのためだ。うぬぼれるな。同時に卑屈にもなるな。これからお前はやり直すのだ」
解説
この名言は、不安定な時代や状況のなかで人がどう生きるべきかを説く、芥川の自己激励と倫理的宣言である。「風に吹かれている葦」という比喩は、古来より人間の弱さとしなやかさを象徴する表現であり、芥川はその存在に対して「根をおろせ」と呼びかける。すなわち、動揺しやすい存在であっても、深く自己を支える信念や責任感を持てという強いメッセージである。
この言葉が書かれた背景には、芥川自身の不安や内的葛藤、時代の混乱に対する真摯な危機意識がある。彼は晩年、自らの神経症的傾向や家庭への責任、社会的不安に深く悩みながらも、自己と家族に向き合う倫理を模索していた。その文脈において、「しっかり踏んばっていろ」「子供たちのためだ」といった語りは、単なる自己鼓舞ではなく、親として、社会の一員としての責務を自覚した言葉である。
現代においても、この名言は胸に響く。不安定な社会、情報の洪水、価値観の揺れ動く中で、個人が地に足をつけて立ち続けるには、自省と覚悟が必要である。「うぬぼれるな。同時に卑屈にもなるな」という対句的警告は、過信と自己否定の両極を超えて、自分の場所を生き直せという普遍的な指針を与えている。芥川のこの言葉は、再出発のための静かで力強い檄文なのである。
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