「ある狂信者のポルトレエ(肖像)ーー彼は皮膚に光沢を持っている。それから熱心に話す時はいつも片目をつぶり、銃でも狙うようにしないことはない」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「ある狂信者のポルトレエ(肖像)ーー彼は皮膚に光沢を持っている。それから熱心に話す時はいつも片目をつぶり、銃でも狙うようにしないことはない」
解説
この名言は、狂信者という存在の外見と内面を冷徹に描写したポートレート(肖像)である。芥川はここで、狂信者を比喩や抽象ではなく、具体的かつ視覚的なイメージで捉えている。光沢のある皮膚、片目をつぶる仕草、そして銃を狙うような視線――これらはすべて、狂信的な人物の異様さと攻撃性を象徴している。
芥川がこのような描写を行った背景には、思想的対立や急進的運動が台頭しつつあった大正時代の社会情勢がある。政治や宗教、文学における「信じすぎる者」たちは、しばしば暴力的、排他的、独善的な態度に陥りがちであった。芥川は、そうした人物を一種の「観察対象」として距離を取りながら冷ややかに見つめ、その危うさを暗に警告している。
この描写は現代においても警鐘として響く。政治的過激主義、陰謀論への耽溺、あるいはネット上の過度な正義感の発露など、「正しさへの執着」が他者への攻撃へと転化する現象は今なお存在する。芥川のこの名言は、狂信とは理性を失った激情であり、その本質は、銃口のように一方向を狙う視野の狭さにあることを的確に伝えているのである。
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