「私がドイツ農民のために立ち上がるとき、それは民族のためである。私は先祖伝来の土地も荘園も持っていない…私は、世界で唯一、銀行口座を持たない政治家だと信じている。株も保有していないし、どの会社の持ち株もない。配当も受け取っていない」

- 1889年4月20日~1945年4月30日
- オーストリア=ハンガリー帝国出身
- ナチス・ドイツの政治指導者
英文
”Whenever I stand up for the German peasant, it is for the sake of the Volk. I have neither ancestral estate nor manor… I believe I am the only statesman in the world who does not have a bank account. I hold no stock, I have no shares in any companies. I do not draw any dividends.”
日本語訳
「私がドイツ農民のために立ち上がるとき、それは民族のためである。私は先祖伝来の土地も荘園も持っていない…私は、世界で唯一、銀行口座を持たない政治家だと信じている。株も保有していないし、どの会社の持ち株もない。配当も受け取っていない」
解説
この発言は、アドルフ・ヒトラーが自己を「無私の指導者」として大衆に印象づけようとするプロパガンダ的言説である。彼はここで、財産も土地も持たず、資本にも関与しないという自己像を強調し、農民や庶民の味方であるという立場を演出している。とりわけ「銀行口座すら持たない」という主張は、腐敗や金権政治とは無縁であるという印象を与えるための象徴的フレーズである。
このような発言は、ナチスの「民族共同体(Volksgemeinschaft)」思想とも密接に関係する。そこでは、民族の階級的統一と指導者の清廉性が理想とされたが、実際にはヒトラー自身も政権獲得後に私的資産を得ていたことが知られており、この発言は事実と矛盾する面を持つ。つまりこれは、政治的正当性と民衆支持を高めるための自己神話化の一部である。
現代においてこのような発言が示す教訓は、政治家や指導者の言葉がそのまま事実とは限らず、イメージ戦略として用いられることへの批判的視点の重要性である。清廉性を装いながら権力を濫用する例は歴史に多く、発言と実態との乖離に注目することが、健全な民主政治を支える基盤である。
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