「純粋なキリスト教――地下墓所時代のキリスト教――とは、キリスト教の教義をそのまま現実に適用しようとするものだ。それは端的に言えば、人類の絶滅へとつながる。見かけは形而上学をまとっているが、内容は熱烈なボルシェヴィズムにすぎない」

- 1889年4月20日~1945年4月30日
- オーストリア=ハンガリー帝国出身
- ナチス・ドイツの政治指導者
英文
”Pure Christianity—the Christianity of the catacombs—is concerned with translating the Christian doctrine into facts. It leads quite simply to the annihilation of mankind. It is merely whole-hearted Bolshevism, under a tinsel of metaphysics.”
日本語訳
「純粋なキリスト教――地下墓所時代のキリスト教――とは、キリスト教の教義をそのまま現実に適用しようとするものだ。それは端的に言えば、人類の絶滅へとつながる。見かけは形而上学をまとっているが、内容は熱烈なボルシェヴィズムにすぎない」
解説
この発言は、アドルフ・ヒトラーが初期キリスト教を根本的に敵視し、ボルシェヴィズムと同質の破壊的思想として位置づけたものである。「地下墓所のキリスト教(Christianity of the catacombs)」とは、迫害下にあったローマ帝政期の原始キリスト教徒たちの信仰を指しており、当時のキリスト教が持っていた無所有・平等・非暴力・忍耐といった価値観を批判的に捉えている。
ヒトラーにとって、そうしたキリスト教の純粋形態は、民族共同体の秩序や国家的力学に反する危険思想であり、「人類の絶滅」をもたらすとまで述べている。この見解は、キリスト教が説く「隣人愛」「自己犠牲」「富の否定」といった倫理が、ナチズムの追求する力・支配・選別の論理と根本的に対立していたことを物語る。
さらに注目すべきは、「ボルシェヴィズム」との同一視である。ヒトラーはここで、ボルシェヴィズム(共産主義)もキリスト教も、個人の権利や社会的平等を重んじる点で、体制を揺るがす「破壊的」思想と断じている。それゆえ両者を精神的に結びつけ、ナチズムから見た「敵の系譜」として扱っている。
このような発言は、宗教的道徳と社会的正義を「弱さ」や「脅威」として排除する全体主義の本質を明確に示す。現代においても、思想や宗教が社会秩序の妨げとされて抑圧される危険性は存在する。異なる価値体系の共存と対話の可能性を否定する発想が、いかにして暴力的支配へとつながるかを歴史は証明している。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?