「憤りは自然によって我々に与えられた防衛のためのものであり、ただ防衛のためだけのものである。それは正義を守る盾であり、無垢を保障するものである」

- 1723年6月5日~1790年7月17日(67歳没)
- スコットランド出身
- 経済学者、哲学者、「古典派経済学の父」
英文
“Resentment seems to have been given us by nature for a defense, and for a defense only! It is the safeguard of justice and the security of innocence.”
日本語訳
「憤りは自然によって我々に与えられた防衛のためのものであり、ただ防衛のためだけのものである。それは正義を守る盾であり、無垢を保障するものである」
解説
この言葉はアダム・スミスの『道徳感情論』における人間の感情理解を示している。彼は、怒りや憤り(resentment)を単なる破壊的な感情とは捉えず、不正に対抗するための自然な防衛手段とみなした。つまり、憤りは復讐心や敵意ではなく、正義を守り、罪なき者を保護するために存在するという解釈である。
18世紀の道徳哲学においては、人間の情念はしばしば制御すべきものと考えられた。しかしスミスは、感情にも社会的役割があると強調し、正義の基盤を理性のみならず感情にも置いた点で独自性を持つ。憤りは不正を見過ごさない心の働きであり、それによって社会秩序が維持されると論じたのである。
現代においても、この視点は重要である。例えば、不正義に対する市民の怒りが社会運動や改革の原動力となる。ここで大切なのは、憤りを私的報復に使うのではなく、正義と無辜の人々を守る方向に昇華させることである。スミスの言葉は、感情の倫理的意義を再評価する上で普遍的な価値を持ち続けている。
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