「公共の利益のために商売をしていると称する者たちによって、多くの善がなされた例を私は知らない」

- 1723年6月5日~1790年7月17日(67歳没)
- スコットランド出身
- 経済学者、哲学者、「古典派経済学の父」
英文
“I have never known much good done by those who affected to trade for the public good.”
日本語訳
「公共の利益のために商売をしていると称する者たちによって、多くの善がなされた例を私は知らない」
解説
この言葉はアダム・スミスの商業活動における動機の本質を突いたものである。彼は、人々が「公共の利益」を掲げて商売を行うと主張しても、実際には自己の利益追求が主要な原動力であると理解していた。スミスは人間の本性を理想化するのではなく、利己心を経済秩序の基盤とみなし、それが結果として社会全体に利益をもたらすと論じた。
この考えは、彼の有名な「見えざる手」の概念とも密接に結びついている。すなわち、個人が自己の利益を追求する過程で、市場の競争と需給の調整によって、意図せずして公共の利益が促進されるという視点である。したがって、公共の利益を直接的に掲げる商売人よりも、利潤追求を正直に行う者の方が、結果的に社会に資する場合が多いと彼は考えた。
現代においても、この言葉は企業のCSR(企業の社会的責任)やESG投資の議論に照らして重要である。企業が表面的に「社会貢献」を掲げても実態が伴わなければ逆効果となり、消費者からの信頼を失う。一方で、健全な利益追求を基盤としつつ、その過程で雇用や技術革新を生み出す企業は、結果的に公共の利益を実現する。スミスの警句は、利己と公益の関係を冷静に見極める視点を今なお提供している。
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