「我々に必要なのは、人類を結びつける思考体系――それを宗教と呼んでもよい――である。それはチャド共和国にもアメリカ合衆国にも適合し、理想を抱く若者たちに信じるに足る何かを与えるような体系でなければならない」

アブラハム・マズローの名言
アブラハム・マズローの名言
  • 1908年4月1日~1970年6月8日
  • アメリカ合衆国出身
  • 心理学者、教育者、理論家
  • 人間性心理学の創始者の一人として知られ、「欲求階層説」や「自己実現」の概念を提唱。人間の成長や潜在能力に焦点を当てた理論は、心理学のみならず教育・ビジネス分野にも大きな影響を与えた。20世紀の心理学思想における中心的人物である。

英文

“What we need is a system of thought – you might even call it a religion – that can bind humans together. A system that would fit the Republic of Chad as well as the United States: a system that would supply our idealistic young people with something to believe in.”

日本語訳

「我々に必要なのは、人類を結びつける思考体系――それを宗教と呼んでもよい――である。それはチャド共和国にもアメリカ合衆国にも適合し、理想を抱く若者たちに信じるに足る何かを与えるような体系でなければならない」

解説

この言葉は、マズローが晩年に取り組んだトランスパーソナル心理学や人間性の超越的な側面に関連する思想である。彼は、人間の精神的成長が自己実現の段階にとどまらず、より普遍的・倫理的価値との結びつきを必要とすることを見抜いていた。この「思考体系」は、単なる哲学や道徳ではなく、人々の間に深い共感と連帯感を育む根源的な信念体系として構想されている。

注目すべきは、それが特定の文化や国に依存しないことを求めている点である。つまり、普遍的で包括的な価値観――たとえば、尊厳、共感、相互理解といった原理――に基づくものでなければならない。そしてその体系は、理想に燃える若者たちが拠り所とできる何かであり、自己中心的な利益追求とは異なる、人類全体の未来に対する信念を支えるものである。

現代では、気候危機、格差、戦争といったグローバルな問題に直面しており、マズローのこの発言は一層の意義を持つ。多様な背景を持つ人々を結びつけ、希望と倫理的行動の土台となる共通言語が求められているのである。マズローが言う「宗教」とは、神学的な制度というよりも、人間の精神的統合と連帯を促す哲学的・倫理的枠組みと捉えるべきであろう。

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