「必要でもなく、欲望でもない—いや、権力への愛こそが人間の悪魔である。健康も、食べ物も、住まいも、娯楽もすべて与えられても、人は不幸で憂鬱なままでいる。なぜなら、その悪魔は待ち続け、満たされることを望んでいるからだ」

フリードリヒ・ニーチェ
フリードリヒ・ニーチェの名言
  • 1844年10月15日~1900年8月25日
  • ドイツ出身
  • 思想家、哲学者、詩人、古典文献学者
  • 『ツァラトゥストラはこう語った』『善悪の彼岸』『道徳の系譜』などの著作で、従来の道徳や宗教、真理に疑問を投げかけ、現代哲学に多大な影響を与えた

英文

“Not necessity, not desire – no, the love of power is the demon of men. Let them have everything – health, food, a place to live, entertainment – they are and remain unhappy and low-spirited: for the demon waits and waits and will be satisfied.”

日本語訳

「必要でもなく、欲望でもない—いや、権力への愛こそが人間の悪魔である。健康も、食べ物も、住まいも、娯楽もすべて与えられても、人は不幸で憂鬱なままでいる。なぜなら、その悪魔は待ち続け、満たされることを望んでいるからだ」

解説

ニーチェは、人間の本質的な苦悩は単なる生存の必要性や欲望からではなく、権力への欲求、つまり「権力への愛」に由来すると考えている。彼の見解では、物質的な豊かさや快適な生活環境が整っていても、人間は本質的な満足を得ることは難しく、それは「権力」や「支配」の欲求が人間の深層に根ざしているからである。この「悪魔」と呼ばれる権力欲は、人間の心の中で常に存在し、満たされることなく人を不安や不満に駆り立てる。そのため、他のすべての必要が満たされても、権力欲が満たされなければ、人は真に満足できない。

この考えは、人間が幸福や充足感を得るには単に物質的なものだけでなく、自己の影響力や存在意義を感じることが不可欠であるという洞察を示している。たとえば、社会的な地位や影響力を持つことを求める人は、物質的な豊かさだけでは満足せず、自らが重要な存在であると感じることを望む。このような「権力への愛」が人間の内面に深く根付いていることで、真の幸福が阻まれることがあるとニーチェは示唆している。彼は、自己の力や支配欲が満たされない限り、他のいかなる満足も完全ではないと考えている。

ニーチェのこの言葉は、人間が真に満足するには、権力欲という内なる悪魔と向き合い、それを理解する必要があることを教えている。物質的な満足だけでは人間の根本的な渇望を癒すことはできず、自己の影響力や権力への欲求が満たされなければ、内面的な不安は残る。ニーチェは、この「悪魔」が人間を常に満足から遠ざける原因であり、真の幸福を追求するには、単なる物質的な欲求を超え、深い心理的な動機に向き合うことが必要であると考えている。

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