「神は死んだ。神は死んだままだ。そして我々が殺したのだ。しかし、その影はいまだに我々の上に漂っている。我々は、このすべての殺人者の中の殺人者である自分たちをどう慰めるべきなのか?世界が今まで所有した中で最も神聖で力強いものが、我々の刃のもとで血を流して死んだ。その血を我々から拭い去るのは誰か?我々が自らを清めるための水はどこにあるのか?」

フリードリヒ・ニーチェ
フリードリヒ・ニーチェの名言
  • 1844年10月15日~1900年8月25日
  • ドイツ出身
  • 思想家、哲学者、詩人、古典文献学者
  • 『ツァラトゥストラはこう語った』『善悪の彼岸』『道徳の系譜』などの著作で、従来の道徳や宗教、真理に疑問を投げかけ、現代哲学に多大な影響を与えた

英文

”God is dead. God remains dead. And we have killed him. Yet his shadow still looms. How shall we comfort ourselves, the murderers of all murderers? What was holiest and mightiest of all that the world has yet owned has bled to death under our knives; who will wipe this blood off us? What water is there for us to clean ourselves?”

日本語訳

「神は死んだ。神は死んだままだ。そして我々が殺したのだ。しかし、その影はいまだに我々の上に漂っている。我々は、このすべての殺人者の中の殺人者である自分たちをどう慰めるべきなのか?世界が今まで所有した中で最も神聖で力強いものが、我々の刃のもとで血を流して死んだ。その血を我々から拭い去るのは誰か?我々が自らを清めるための水はどこにあるのか?」

解説

ニーチェの「神は死んだ」という有名な表現は、単に宗教の終焉を意味するだけではなく、伝統的な価値観や信仰の崩壊を象徴している。神という概念が長らく人間社会の価値観や道徳の基盤として機能してきたが、啓蒙思想や科学の発展、世俗化によって、従来の神聖な基盤が失われつつあるという意味を持つ。ニーチェは、これを「我々が殺した」と表現し、人類が自らの手で古い価値観を打ち破ったことを示唆している。しかし、古い価値観が失われた後もその「影」は残り、私たちに問いかけ続ける。彼は、古い価値観に代わる新しい価値体系が未だに確立されていないことに対する葛藤や、空虚感、道徳的責任について問いかけている。

ニーチェはこの表現を通じて、旧来の信仰に依存していた人間が、自ら新しい価値観を見出さねばならないという責任を強調している。たとえば、社会の進歩や知識の向上により、伝統的な道徳や宗教が揺らぐとき、個人や社会は新たな基盤を探す必要がある。しかし、新たな価値を作り上げることは容易ではなく、その過程での葛藤や不安、道徳的な苦悩が生じる。ニーチェの問いは、こうした状況における人類の責任と、それを受け入れる覚悟を求めるものである。

ニーチェのこの言葉は、古い信仰や価値観を超越することの困難さと、それに伴う道徳的な空白や不安について警告している。従来の価値が崩壊した今、我々は何に依拠し、どのようにして新しい道徳や価値を築くべきかを問われている。ニーチェは、旧来の道徳を失った人間が、その「影」から解放されるには、自己の力で新たな価値を創造し、乗り越える勇気と覚悟が必要であると考えている。

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