「完全な信頼を寄せてくれた人々は、私たちからの信頼を得る権利があると考える。しかしその推論は誤りであり、贈り物は権利を与えない」
- 1844年10月15日~1900年8月25日
- ドイツ出身
- 思想家、哲学者、詩人、古典文献学者
- 『ツァラトゥストラはこう語った』『善悪の彼岸』『道徳の系譜』などの著作で、従来の道徳や宗教、真理に疑問を投げかけ、現代哲学に多大な影響を与えた
英文
”People who have given us their complete confidence believe that they have a right to ours. The inference is false, a gift confers no rights.”
日本語訳
「完全な信頼を寄せてくれた人々は、私たちからの信頼を得る権利があると考える。しかしその推論は誤りであり、贈り物は権利を与えない」
解説
ニーチェは、信頼や贈り物はあくまで一方的なものであり、それを受けた側に同じものを返す義務や責任が生じるわけではないと指摘している。人間関係において、誰かが自分に信頼や愛情を寄せた場合、無意識にその見返りを期待することが多い。しかしニーチェは、こうした見返りの期待が、相手に対する「権利」ではないと述べている。信頼を与えること自体は自己の選択であり、それをもって相手からの同等の信頼を求めることは誤りだというのだ。
現代でも、一方的な好意や信頼が、必ずしも返ってくるとは限らないことは人間関係の中でよく見られる。例えば、仕事で信頼を寄せて任せた相手が、それに応じた信頼や感謝を示さないとき、苛立ちや不満が生まれることがある。しかし、ニーチェの視点に立てば、信頼はあくまで自発的な行為であり、見返りを期待するべきではないのだ。
この言葉は、自己と他者の関係において「見返りのない信頼」の大切さを強調している。人間関係において、相手から同じものを得ようと期待するのではなく、むしろ自分が純粋に与えることを目指すべきだという考え方だ。こうしたアプローチにより、相互の関係性がより自由で健全なものになり、無意識の義務感から解放される。ニーチェの言葉は、見返りを求めない信頼や愛情の価値を考えさせるものであり、他者への期待に縛られない自立した心の在り方を教えている。
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