「詩人は物語の筋を組み立て、適切な表現でそれを練り上げる際に、できる限りその場面を目の前に置くべきである。そうすることで、まるで観客のようにすべてを生き生きと見渡し、物語にふさわしいものを見つけ、不整合を見逃すこともなくなる」
- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者・科学者で学園「リュケイオン」の設立者
- プラトンの弟子で、論理学、生物学、政治学、倫理学などにおいて体系的な知識を構築し、西洋の思想や科学の発展に大きな影響を与えた
英文
”In constructing the plot and working it out with the proper diction, the poet should place the scene, as far as possible, before his eyes. In this way, seeing everything with the utmost vividness, as if he were a spectator of the action, he will discover what is in keeping with it, and be most unlikely to overlook inconsistencies.”
日本語訳
「詩人は物語の筋を組み立て、適切な表現でそれを練り上げる際に、できる限りその場面を目の前に置くべきである。そうすることで、まるで観客のようにすべてを生き生きと見渡し、物語にふさわしいものを見つけ、不整合を見逃すこともなくなる」
解説
この言葉は、アリストテレスが物語の創作における想像力と視覚化の重要性を説いたものである。彼は、詩人や劇作家がプロット(筋書き)を組み立てる際に、頭の中でその場面を鮮明に描くことが創作の質を高めるために不可欠だと考えた。場面を「目の前に置く」ことで、作家は読者や観客の視点で物語を捉えることができ、自然な流れを保ちながら不整合を避けられるとした。これは、物語にリアリティと一貫性を持たせるための重要な手法といえる。
アリストテレスは、作家が物語を俯瞰的に見ることで、物語の一部が浮き彫りになり、その場面ごとの流れや構成が一貫しているかを見極めやすくなると考えた。視覚化することで、細部においても物語にふさわしい内容が選ばれ、矛盾のない完成度の高い作品が生まれる。これは、作家が登場人物の感情や動きを正確に捉え、物語が自然に展開していくための方法でもある。
現代の具体例として、映画やドラマの脚本作成が挙げられる。脚本家がシーンを細かく想像し、まるでカメラのレンズ越しに場面を見ているかのように描写することで、視覚的にも一貫性のある物語が生まれる。たとえば、映画監督がシーンの動きや登場人物の表情を細部まで練り上げる際、視覚化を重視することで物語の矛盾を避け、観客が物語に引き込まれやすくなる。また、小説においても、登場人物の内面や背景を視覚的に想像しながら描写することで、読者にとってリアリティが増し、物語に深く没入できるようになる。
アリストテレスのこの言葉は、想像力と視覚化が物語の一貫性と説得力を高めることを示している。作家がまるで観客のように作品を見ることで、物語が現実に近い感覚を持ち、読者や観客に強い印象を与える作品が生まれる。観客が感情移入できる物語を作るためには、まず作家自身が視覚的なリアリティを追求する必要があり、これが物語の完成度と感動を高める秘訣であるといえるだろう。
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