「自伝というものはとても魅惑的で、素晴らしいものです。一度それに取り組むと、自分がフレデリック・ダグラスが確立した伝統――奴隷の体験記――を継承していることに気づきました。そこでは一人称単数で語りながら、一人称複数について話すのです。常に『私』と言いながら、『私たち』を意味しているのです」

マヤ・アンジェロウ(画像はイメージです)
マヤ・アンジェロウ(画像はイメージです)
  • 1928年4月4日~2014年5月28日(86歳没)
  • アメリカ合衆国出身
  • 詩人、作家、歌手、舞台俳優、公民権運動活動家

英文

“Autobiography is awfully seductive; it’s wonderful. Once I got into it, I realized I was following a tradition established by Frederick Douglass – the slave narrative – speaking in the first-person singular, talking about the first-person plural, always saying ‘I,’ meaning ‘we.'”

日本語訳

「自伝というものはとても魅惑的で、素晴らしいものです。一度それに取り組むと、自分がフレデリック・ダグラスが確立した伝統――奴隷の体験記――を継承していることに気づきました。そこでは一人称単数で語りながら、一人称複数について話すのです。常に『私』と言いながら、『私たち』を意味しているのです」

解説

この言葉は、アンジェロウが自伝文学を社会的・歴史的伝統の中に位置づけていたことを示している。彼女にとって自伝は単なる個人の記録ではなく、黒人共同体全体の声を伝える行為であった。奴隷制を経験したフレデリック・ダグラスの自伝は、その典型であり、個人の「私」が語る物語が共同体の「私たち」の物語となる。アンジェロウも同じ構造を意識して自伝を書いたのである。

背景には、アフリカ系アメリカ人の歴史において「語ること」が抑圧への抵抗であったという事実がある。文字を学ぶことすら禁じられた歴史を経て、黒人が自らの経験を一人称で語ることは、同時に共同体の尊厳と解放を語ることにつながった。アンジェロウはその伝統を継ぎ、個人の物語を普遍的なメッセージへと昇華させた。

現代においても、この言葉は個人の物語が共同体や人類全体の物語に通じるという視点を教えている。自伝や回想録は自己表現の枠を超え、同じ境遇や歴史を共有する人々に力を与える。アンジェロウの言葉は、「私」を語ることが「私たち」を語ることになる文学の力を鮮明に示している。

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