「講義がうまくいくと、すべてがあまりにも滑らかになってしまう。音楽でも同じで、演奏があまりに完璧だと本当に楽しめない。なぜなら、それはただ通り過ぎてしまい、その核心に入り込むことができないからだ。時には下手な演奏の方が楽しめることもある。誤りを見て、それを分析できるからである」

ヴェルナー・ハイゼンベルク(画像はイメージです)
ヴェルナー・ハイゼンベルク(画像はイメージです)
  • 1901年12月5日~1976年2月1日(74歳没)
  • ドイツ出身
  • 物理学者、ノーベル物理学賞受賞者

英文

”If the lecture is good, then everything is too smooth. That’s the same in music: if the performance is too good, you really don’t enjoy it, because it just goes by, and you can never penetrate into the heart of it. Sometimes a poor performance is better for enjoyment, because you can look at those things that were wrong and analyze them.”

日本語訳

「講義がうまくいくと、すべてがあまりにも滑らかになってしまう。音楽でも同じで、演奏があまりに完璧だと本当に楽しめない。なぜなら、それはただ通り過ぎてしまい、その核心に入り込むことができないからだ。時には下手な演奏の方が楽しめることもある。誤りを見て、それを分析できるからである」

解説

この言葉は、不完全さが学びや理解を深める契機となるという逆説的な洞察を示している。講義や演奏があまりに完璧であると、聞き手は流れに身を委ねるだけで、積極的に考えたり理解を深めたりする余地がなくなる。むしろ、欠点や誤りがあることで、受け手は注意深く観察し、分析を通じて本質に迫ろうとする。

この視点は、ハイゼンベルク自身の物理学的思考ともつながっている。量子力学の発展は、既存の理論の「不完全さ」や説明できない現象に注目することから始まった。欠陥や矛盾は進歩のきっかけとなり、完全無欠に見える体系よりも、疑問を投げかける不備の方が創造性を刺激するのである。

現代においても、この言葉は教育や芸術に通じる。完璧な説明や演奏は一見理想的だが、人を惹きつけ、理解を深めるのはむしろ不完全さや揺らぎである。ハイゼンベルクの指摘は、科学者としての洞察だけでなく、学びや芸術の本質を捉えた普遍的な知恵を含んでいる。

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