「物質も放射も顕著な二重性を持ち、ときには波の性質を示し、ときには粒子の性質を示すことが見られる。ところが、一つのものが同時に波動の形態であり、しかも粒子から成り立っているなどということは明らかにあり得ない。両者の概念はあまりにも異なっているからである」

ヴェルナー・ハイゼンベルク(画像はイメージです)
ヴェルナー・ハイゼンベルク(画像はイメージです)
  • 1901年12月5日~1976年2月1日(74歳没)
  • ドイツ出身
  • 物理学者、ノーベル物理学賞受賞者

英文

”It is seen that both matter and radiation possess a remarkable duality of character, as they sometimes exhibit the properties of waves, at other times those of particles. Now, it is obvious that a thing cannot be a form of wave motion and composed of particles at the same time – the two concepts are too different.”

日本語訳

「物質も放射も顕著な二重性を持ち、ときには波の性質を示し、ときには粒子の性質を示すことが見られる。ところが、一つのものが同時に波動の形態であり、しかも粒子から成り立っているなどということは明らかにあり得ない。両者の概念はあまりにも異なっているからである」

解説

この言葉は、量子力学における波動と粒子の二重性の難問を鋭く表現している。電子や光子は、ある状況では干渉や回折といった波動的性質を示し、別の状況では粒子的ふるまいを示す。しかし古典物理学的な直観からすれば、波と粒子は相容れない概念であり、両立することは不可能に思える。ここに量子論の核心的な逆説が存在する。

ハイゼンベルクは、不確定性原理やコペンハーゲン解釈を通じて、この二重性を「観測状況によって異なる側面が現れる」という形で理解しようとした。つまり、電子や光は本質的に波でも粒子でもなく、観測によってどちらの性質が顕在化するかが決まるという立場である。このように、波と粒子を同時に理解するのではなく、観測と文脈に応じて補完的に用いることで矛盾を回避した。

現代から見ると、この二重性は量子論を象徴する特質として受け入れられている。半導体やレーザーなどの技術は、波と粒子の二重のふるまいを前提に成り立っている。相容れない概念をどう調和させるかという課題は、物理学に限らず哲学や認識論にも広がっている。この言葉は、量子論がもたらした思考の根本的な困難を端的に表現したものなのである。

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