「このウランの件によって、アングロサクソン諸国は計り知れない力を得て、ヨーロッパはアングロサクソンの支配下にある一つのブロックとなるだろう。もしそうなるなら、それは非常に良いことである。スターリンがこれまでのように他国に対抗できるかどうか、私は疑問に思う」

ヴェルナー・ハイゼンベルク(画像はイメージです)
ヴェルナー・ハイゼンベルク(画像はイメージです)
  • 1901年12月5日~1976年2月1日(74歳没)
  • ドイツ出身
  • 物理学者、ノーベル物理学賞受賞者

英文

”I believe this uranium business will give the Anglo-Saxons such tremendous power that Europe will become a bloc under Anglo-Saxon domination. If that is the case, it will be a very good thing. I wonder whether Stalin will be able to stand up to the others as he has done in the past.”

日本語訳

「このウランの件によって、アングロサクソン諸国は計り知れない力を得て、ヨーロッパはアングロサクソンの支配下にある一つのブロックとなるだろう。もしそうなるなら、それは非常に良いことである。スターリンがこれまでのように他国に対抗できるかどうか、私は疑問に思う」

解説

この言葉は、原子力と地政学の結びつきを如実に示している。ハイゼンベルクは戦後の国際秩序において、ウランを利用した原子力技術がアメリカやイギリスといったアングロサクソン諸国に圧倒的な優位をもたらすと予見していた。彼はこの力の集中によって、ヨーロッパが一体化し、ソ連の影響力が制限されることをむしろ望ましいと評価している。

この背景には、第二次世界大戦直後の冷戦構造の萌芽がある。ソ連の拡張を前にして、西欧諸国がどのように存続するかは大きな課題であった。ハイゼンベルクにとって、アングロサクソン諸国の主導による統合がドイツとヨーロッパの文化的伝統を守る道であり、スターリン主導のソ連の影響を受けるよりも好ましい選択に見えたのである。

現代から振り返ると、この言葉は部分的に的中している。実際にアメリカとイギリスは核兵器を背景に強大な影響力を持ち、NATOを中心とした西欧の安全保障体制を築いた。一方でソ連も核保有国となり、冷戦は二極対立の構造を形成した。ハイゼンベルクの言葉は、科学技術が国際政治の力学を左右する現実を予見した証言として重要である。

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