「今日、私には、倫理は経済に外在するものではなく、技術的な事柄として経済がそれ自体で機能し得るものでもないことが明らかに思える。むしろ倫理は経済そのものの内的原理であり、連帯と相互責任という人間的価値を考慮しなければ経済は機能しない」

- 1927年4月16日~2022年12月31日(95歳没)
- ドイツ出身
- ローマ教皇(在位2005年~2013年)、神学者、枢機卿
英文
”To me, it really seems visible today that ethics is not something exterior to the economy, which, as technical matter, could function on its own; rather, ethics is an interior principle of the economy itself, which cannot function if it does not take account of the human values of solidarity and reciprocal responsibility.”
日本語訳
「今日、私には、倫理は経済に外在するものではなく、技術的な事柄として経済がそれ自体で機能し得るものでもないことが明らかに思える。むしろ倫理は経済そのものの内的原理であり、連帯と相互責任という人間的価値を考慮しなければ経済は機能しない」
解説
この言葉は、経済活動と倫理の不可分性を強調している。ベネディクト16世は、経済を単なる技術的・数値的な仕組みとして捉える立場を退け、そこに人間的価値を組み込む必要性を訴えている。経済は人間の営みである以上、倫理を無視すれば健全に働かなくなるという視点である。
特に「ethics is an interior principle of the economy itself」という表現は、倫理が経済の外部から制御する規範ではなく、経済の内部に組み込まれるべき原理であることを示す。つまり、利益追求と効率性だけでは持続可能性を保てず、連帯や責任といった倫理的要素がなければ経済そのものが崩壊する。2008年の金融危機なども、その背景に倫理の欠如があったと理解できる。
現代的応用として、この言葉は持続可能な経済や社会的企業の発展に直結する。環境問題、労働の不平等、国際的格差といった課題に対して、倫理を無視した経済活動は限界に直面している。したがって、経済を真に機能させるためには、人間の尊厳を基盤にした倫理を不可欠な要素として組み込む必要がある。この発言は、経済学と倫理学の統合を促す普遍的な指針といえる。
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