「教会は常にヨーロッパ生活の古い伝統的構造をさらに放棄しつつあり、そのために姿を変え、自らの内部で新しい形を生きていることは明らかである。最も明白なのは、ヨーロッパにおける脱キリスト教化が進行しており、社会の構造からキリスト教的要素がますます消えつつあるということである」

教皇ベネディクト16世(画像はイメージです)
教皇ベネディクト16世(画像はイメージです)
  • 1927年4月16日~2022年12月31日(95歳没)
  • ドイツ出身
  • ローマ教皇(在位2005年~2013年)、神学者、枢機卿

英文

”It is evident that the Church is always abandoning more the old traditional structures of European life and, therefore, is changing its appearance and living new forms in itself. It’s clear most of all that the de-Christianization of Europe is progressing, that the Christian element is always vanishing more from the fabric of society.”

日本語訳

「教会は常にヨーロッパ生活の古い伝統的構造をさらに放棄しつつあり、そのために姿を変え、自らの内部で新しい形を生きていることは明らかである。最も明白なのは、ヨーロッパにおける脱キリスト教化が進行しており、社会の構造からキリスト教的要素がますます消えつつあるということである」

解説

この言葉は、近代から現代にかけて進行するヨーロッパの世俗化と脱キリスト教化への深い憂慮を表している。かつてヨーロッパ社会の中心であったキリスト教は、政治、教育、文化に強い影響を与えてきた。しかし、20世紀後半以降の急速な世俗化により、宗教の影響力は低下し、教会の存在感も変容を余儀なくされている。ベネディクト16世は、伝統的な構造の放棄と新しい形の模索が不可避であることを認めつつも、信仰の衰退が社会全体に及ぼす影響を警告している。

さらに、ここでは教会の変化そのものと、社会全体の脱キリスト教化の進行を区別して捉えている点が重要である。教会は新しい時代に適応しようとする一方で、その外部ではキリスト教的価値が急速に失われている。この二重の現象は、教会がいかに現代社会の中で信仰を再生させるかという課題を突きつけている。

現代への応用として、この言葉は信仰の衰退がもたらす倫理的・文化的空白について考えさせる。例えば、ヨーロッパにおける個人主義や消費主義の拡大は、宗教が担ってきた共同体的価値の弱体化と結びついているともいえる。同時に、教会は新しい形で社会に関与し、教育、福祉、対話を通じて価値を再提示する必要がある。この警告は、宗教と社会の関係が大きく揺らぐ時代にあって、人類がどのように精神的基盤を築き直すかという普遍的な課題を示している。

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