「蔓延する国粋主義は今日、さまざまな形で人間に支配を押しつけ、その攻撃性は誰一人として免れない。すでに私たちの前にある課題は、真の自由ではなく、実際には新しい形の隷属にすぎないものを自由として受け入れてしまう誘惑である」

教皇ヨハネ・パウロ2世(画像はイメージです)
教皇ヨハネ・パウロ2世(画像はイメージです)
  • 1920年5月18日~2005年4月2日(84歳没)
  • ポーランド出身
  • ローマ教皇、哲学者、神学者

英文

”Pervading nationalism imposes its dominion on man today in many different forms and with an aggressiveness that spares no one. The challenge that is already with us is the temptation to accept as true freedom what in reality is only a new form of slavery.”

日本語訳

「蔓延する国粋主義は今日、さまざまな形で人間に支配を押しつけ、その攻撃性は誰一人として免れない。すでに私たちの前にある課題は、真の自由ではなく、実際には新しい形の隷属にすぎないものを自由として受け入れてしまう誘惑である」

解説

この言葉は、ヨハネ・パウロ2世が国粋主義の危険性と自由の誤解について語ったものである。彼は、国粋主義が人々の連帯を壊し、他者を排除する攻撃性を生むことを強く懸念した。また、表面的には「自由」の名のもとに振る舞う思想や制度が、実際には人間を新たな隷属へと導く可能性を警告している。ここで言う隷属とは、思想的拘束や権力への従属を意味している。

歴史的背景として、この発言は冷戦期の民族主義的対立や独裁的体制の復活を視野に入れている。第二次世界大戦の悲劇を経験した世代として、ヨハネ・パウロ2世はナチズムや全体主義の再来を防ぐために、国粋主義の過激化を繰り返し警告した。同時に、消費主義やイデオロギーが「自由」を装って人間を縛る状況にも警鐘を鳴らしていた。

現代においても、この言葉は排外主義やポピュリズムの台頭に直結する。グローバル化の進展と同時に、強いナショナリズムが再び勢いを増しているが、それはしばしば他者への不寛容や自由の制限を伴う。ヨハネ・パウロ2世の警告は、真の自由とは責任と尊厳に根ざすものであり、偽りの自由は隷属に過ぎないという普遍的な教訓を示しているのである。

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