「物理学の使命が自然がどうであるかを見出すことだと考えるのは誤りである。物理学が扱うのは、我々が自然について何を語るかということである」

ニールス・ボーア(画像はイメージです)
ニールス・ボーア(画像はイメージです)
  • 1885年10月7日~1962年11月18日(77歳没)
  • デンマーク出身
  • 物理学者、原子模型の提唱者、ノーベル物理学賞受賞者

英文

”It is wrong to think that the task of physics is to find out how Nature is. Physics concerns what we say about Nature.”

日本語訳

「物理学の使命が自然がどうであるかを見出すことだと考えるのは誤りである。物理学が扱うのは、我々が自然について何を語るかということである」

解説

この名言は、物理学の本質が「自然そのもの」ではなく、「自然についての記述」にあるという認識論的立場を示している。ボーアは量子力学の発展において、観測や測定の結果が観測者の行為によって左右されるという事実に直面し、科学は客観的実在を直接描写するものではなく、それに関する人間の語り方・記述の体系であると考えるに至った。

従来の古典物理学は、自然界が人間の認識とは無関係に存在し、それを正確に写し取ることが科学の目的だと前提していた。しかし量子論では、観測そのものが現象の一部となる。たとえば電子の位置や速度は、測定しなければ定まらず、観測の方法によって結果が変化する。これは、「自然がどうであるか」という問いが観測抜きでは意味を持たなくなることを意味している。

この名言は、現代における情報科学や人工知能の分野においても重要である。私たちは客観的「真理」を捉えるのではなく、常に枠組み・文脈・手段を通して「現実」を構成している。ゆえに科学とは、自然を「語る」方法を磨き続ける営みであり、ボーアのこの言葉は、科学を通じた人間の自己理解の深まりを示す哲学的洞察にほかならない。

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