「このように、新しい種類の理論が必要であることが分かる。その理論は、これらの基本的な前提を捨て、古い理論のいくつかの本質的特徴を、より深い現実から導かれた抽象的な形として回復するにとどまる。その現実においては、途切れることのない全体性が支配しているのだ」

デヴィッド・ボーム(画像はイメージです)
  • 1917年12月20日~1992年10月27日(74歳没)
  • アメリカ合衆国出身(後にイギリスに帰化)
  • 理論物理学者、哲学者

英文

”One thus sees that a new kind of theory is needed which drops these basic commitments and at most recovers some essential features of the older theories as abstract forms derived from a deeper reality in which what prevails in unbroken wholeness.”

日本語訳

「このように、新しい種類の理論が必要であることが分かる。その理論は、これらの基本的な前提を捨て、古い理論のいくつかの本質的特徴を、より深い現実から導かれた抽象的な形として回復するにとどまる。その現実においては、途切れることのない全体性が支配しているのだ」

解説

この言葉は、既存の理論の限界を超える新しい理論の必要性を示している。デヴィッド・ボームは、相対性理論や量子力学といった20世紀の大理論が部分的には有効であるものの、根源的には断片化された世界観に基づいていると考えた。そこで彼は、従来の理論の枠組みをそのまま維持するのではなく、より深い現実に根ざした「全体性の理論」を求めたのである。

歴史的に見れば、科学の発展は常に既存理論の批判と再編によって進んできた。ニュートン力学は古代の自然観を超えて成立し、さらに相対性理論や量子力学はニュートン力学の一部を抽象的な形で保持しつつ、より広い現実を説明する枠組みを築いた。ボームの提唱する方向性は、この伝統を受け継ぎながら、断片化ではなく全体性を基盤とする理論を構想する試みであった。

現代においても、この洞察は深い意義を持つ。物理学の統一理論の探求や、複雑系科学、システム思考などの分野は、部分ではなく全体の連関に焦点を当てている。ボームの言葉は、科学がより深い現実に根ざすためには、途切れのない全体性を基盤とする新しい理論的枠組みが不可欠であるという示唆を与えている。

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