「人間は、機械によって物質的労苦に手と心を縛りつけていた不安から次第に解放され、多くの仕事から免れ、しかも自らの知性が絶えず生み出し改良せざるを得ない装置によって、行動の速度をますます高めることを強いられた結果、突然の怠惰の中に投げ込まれようとしている」

ピエール・テイヤール・ド・シャルダン(画像はイメージです)
ピエール・テイヤール・ド・シャルダン(画像はイメージです)
  • 1881年5月1日~1955年4月10日(73歳没)
  • フランス出身
  • イエズス会士、神学者、古生物学者、哲学者

英文

“Progressively saved by the machine from the anxieties that bound his hands and mind to material toil, relieved of a large part of his work and compelled to an ever-increasing speed of action by the devices which his intelligence cannot help ceaselessly creating and perfecting, man is about to find himself abruptly plunged into idleness.”

日本語訳

「人間は、機械によって物質的労苦に手と心を縛りつけていた不安から次第に解放され、多くの仕事から免れ、しかも自らの知性が絶えず生み出し改良せざるを得ない装置によって、行動の速度をますます高めることを強いられた結果、突然の怠惰の中に投げ込まれようとしている」

解説

この言葉は、機械文明と人間存在の矛盾を鮮明に示している。シャルダンは、機械による労働の軽減が人間を自由にする一方で、予期せぬ「怠惰」への転落をもたらす危険を見抜いていた。機械化は人間を物質的な束縛から解放するが、その自由が内的成長や創造性に向かわなければ、人は目的を失い、空虚に陥るという警告である。

背景には、20世紀初頭の急速な産業化と技術革新がある。当時の社会は機械による効率化に熱狂したが、同時に人間の役割や生きる意味が揺らぎ始めた。シャルダンは、進化の担い手としての人間の使命を強調し、ただ解放されるだけでなく、新しい意識と行動の形を見出さねばならないと考えた。

現代においても、この指摘は鋭い。AIや自動化が進む社会では、多くの労働が機械に代替され、人は自由時間を得る。しかし、それを自己陶酔や消費に費やすならば「怠惰」に陥る。逆に、それを学び、創造し、社会や精神の発展に役立てるならば、進化の新段階へと進む契機となる。この名言は、技術の進歩と人間の内的成長が不可分であることを教えている。

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